山倉ふう事件簿Vol.4『卍に倒れた人』

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 実妹の短期大学時代2年間、両親に頼まれ一緒に生活していました。
 今では2女児の母として妻として目まぐるしく家庭を切り盛りする実妹ですが、当時は家事を一切せず服も投げ散らかしていたので、家賃・光熱費など必要経費の支払いや掃除・洗濯・炊事も私がします。
 偶にキューサイ青汁入り何とも言えない臭気漂う緑色の『魔女カレー』を作って実妹にだけ大盛りで出したりしていましたが、7年離れているので、赤提灯や近所の寿司屋で時折贅沢をして概ね仲良く暮らしていました。
 実妹は私より早くPHSを持っていたのですが、電波の調子が悪く国道沿いに面していた私の部屋の出窓に頭を押しつけるようによく電話をします。
 その時も、私はTVドラマを夢中になって観ていたのですが、実妹は途中で友人から電話が掛かってきたので席を外していました。
 国道を走る暴走族に迷惑していましたが、それとは違うブレーキと鈍い音がしたのです。
 私は野次馬根性が全く無いので、国道を走るトラックが荷物を落としたのだろうと微動だにせずTVドラマを観続けていたのですが、実妹が「お姉ちゃん、人が撥ねられた」と大声を出しました。
 けれど、半分以上TVドラマに集中していた私は「それは大変だ」と全く大変では無いように返事をします。しかも、自分はTVドラマの続きが気になったので全く動かず妹に119番連絡を指示。
 しかし、実妹は動転してしまったらしく全く動きません。もしかすると、腰が抜けて動けなかったのかもしれません。
 鬼のような私は、119番した後に「倒れた人の意識はあるのか」「轢いた車は居るのか、記憶しているか」見た事実以外は決して伝えないように言ったのですが、相変わらず実妹が動かないので、TVドラマを諦めて電話の子機を持ち、出窓から事故現場と状況を見降ろしながら119番に電話をしました。
 あんなに不機嫌そうに119番通報することも無かったと反省です。
 国道の反対側に人が卍の格好で倒れていました。意識は無いのか私たちの部屋からは解りませんが、全く動きません。靴は片方だけ脱げて1m程飛んでいました。轢いたと思われる白・もしくは銀の乗用車は5m程離れて止まり、中年男性が携帯電話かPHSでどこかに連絡しています。
 既に別口で通報されているかもしれないので、重複になるかもしれない旨を伝えた上で自分の氏名・住所・電話番号を伝えました。
 その後、実妹はずっと事故現場を見ていましたが、私は来週の予告しか残っていなかったTVドラマに戻りました。
 流石に生死が気になったので、翌日の朝刊と夕刊は職場で確認しましたが記事にはなっておらず、卍の人がどうなったのかは今も解りません。
 助かっていたら良いと思います。
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