お薦めの本 「月の影 影の海(上下)」 小野不由美(著)

  • この記事にタグをつけてください
  



「ライトノベル」……ティーンズ向けの小説のこと。主に恋愛ものや、ファンタジー(異世界を舞台とした冒険小説)ものがほとんど。

月の影月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
(1992/06)
小野 不由美

商品詳細を見る



私がティーンのころ「ライトノベル」というジャンルはなく、「少女向け小説」と呼ばれていました。紹介する月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハートwidth=
は、16年前に初版発行された、少女向けのファンタジー小説です。

それまでの少女向け小説は、なんというか、女の子の片思いの心情がつらつらと書かれた作品が多く、 正直つまらなかった。
ハマッてる子も多かったんですが、少ない字と挿絵ばかりでイマイチだったんです。

今思えば、そんな少女向け小説のなかで「小野不由美」という作家さんは異色だったのでしょうね。

本書を手に取ったのは、17歳の夏休み、父の単身赴任先におさんどん(笑)をしに行ったときのこと。
ひまをもてあまし、寿屋(なつかしーっ)の書店コーナーをぶらぶらしていたとき、新刊として並んでいた本書を見つけたのです。
デビュー作から読んでいて、結構おもしろい作家さんだと思っていたのと、当時としては神秘的で異色な挿絵だったのとに惹かれて、即買いしました。

ひまつぶしのつもりで買ったはずが、読み進めるうちにどっぷりつかってしまい、おさんどんも宿題も投げ出して夢中になりました。乱歩以来(笑)……とにかく衝撃的でした。


上下巻とも読み終えたときは、しばらくボーッとなって使い物にならなかった(笑)

本書の主人公は、中嶋陽子(なかじまようこ)という平凡な女子高生です。
「あなたは私の主、お迎えに参りました」
ある日突然、ケイキと名乗る男が学校に現れ、そう言われて訳も分からないまま異世界に連れ去られてしまいます。
あらすじだけでは、ありがちなお話のようですよね。イケメンの男性が主人公を守りながら、呪文や魔法を使って敵を退治し、ちょっとの恋愛があってハッピーエンド。
ところが本書はそんな甘っちょろい夢物語(ファンタジー)ではありませんでした。

異世界は、飢えも貧富の差もあるこちらとは何ら変わらない世界。そこに多次元の人間が紛れ込めば、異人として差別を受け排除されてしまうのはさもありなんで、主人公はさっそく処刑の危機に見舞われます。
なのに、ケイキと名乗る男とははぐれてしまい、助けてくれる人間はだれもいない。
自分しかいない。

この自分しかいない、という状況が、陽子自身の葛藤、自分とのせめぎ合いという心情を生みます。

陽子は両親にとっても友達にとっても癖のない「いい子」で生きてきました。
誰にも嫌われたくないから、他人に合わせて、長いものに巻かれてしまう。もはや他人と自分の境界が分からず、自分を見失っていることすら気づかない。
当時、学校でも家でも得体の知れない焦燥を感じていた私は、陽子はまるで自分自身のように思えました。

陽子は、訳もなく他人に追われ、裏切られ、化け物に襲われ、血だらけになりながら、否応なしに「自分」を見せつけられていきます。主人公もつらいけど読んでるほうもものすごくつらい。
でも読むのをやめられない。陽子が変わりたいとあがく姿から目が離せないのです。

本書は独自の世界観がしっかりと確立しています。舞台は幻想の中国。道教の世界です。
悪鬼魍魎や神仙が活躍する「西遊記」や「封心演技」のような世界です。妖魔なんかもいっぱい出てきて、難しい漢字もいっぱい(笑)ティーンズ向けなのに。
伏線もしっかりしていて、なぜ陽子がこんな目にあったのか、すべての答えが下巻に集約されています。合点がいった〜!って感じですがすがしい読み終わりです。

月の影月の影 影の海〈下〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
(1992/07)
小野 不由美

商品詳細を見る




/

下巻です↑上巻読んだらとまりませんよ。購入はここから↑


 この話は続巻が出ていて、まだまだ続いています。今のところ10巻くらいかな。
その間に口コミで話題を呼び、ティーンズ向けのはずが、老若男女すべての世代に読まれるようになりました。大人世代から、ティーンズ向けの表紙は恥ずかしいとの要望があり、講談社文庫より挿絵なしが発行され、現在累計700万部です! すごい!
ファンタジーの金字塔とまで言われるようになりました。

小野不由美さんのすごいところは、描写がうまく、設定が完璧なところ。リアリティがしっかりしてる。
こんなにもたくさんの人の心をつかんだのは「人間」を描いているからでしょう。
読み終わったときに、何かが心に残る。
初版発行から16年経ちましたが、折に触れ何度も何度も読み返してきました。
でも本当の意味で作者の言いたかったことを理解したのは成人してからだったかもしれません。

ここで下巻からすこーし抜粋…

ひとりでひとりで、この広い世界にたったひとりで、助けてくれる人も慰めてくれる人も、誰ひとりとしていなくても。それでも陽子が他者を信じず卑怯に振る舞い、見捨てて逃げ、ましてや他者を害することの理由になどなるはずがないのに。
……強くなりたい……。
世界も他人も関係がない。胸を張って生きることができるように、強くなりたい。

苦しみ抜いた主人公の到達した答えです。涙が出ましたね。
「強くなる」っていうことは、たぶんこういうことなのでしょう。他人から見た自分を評価するのではなく、他人から批判を受けるからではなく、自分がお天道さまに顔向けできない生き方はしない。
自分は、自分だ、ということ。


ティーンズ向けとは思えないほど深い内容です。



人生の早い段階にこの本に出会って本当によかったと思います。
たくさんの人におすすめしたい本です。これいいよ。 ↓ちなみに講談社文庫版です。

月の影月の影 影の海〈上〉十二国記 (講談社文庫)
(2000/01)
小野 不由美

商品詳細を見る

 だいぶ購入しやすいでしょ(笑)

でも山田章博さんの華麗なイラストも目が離せませんよ。

主人公と一緒に成長していく。そんな感じで読めます。それにしても、主人公がこんなに悲惨な目にあった小説はこれをおいてほかに知りません。



 





この記事は文学・評論【本】に投稿されためぐさんのブログ記事です。
http://gohugatree.blog32.fc2.com/blog-entry-45.html

執筆者めぐさん

投稿日時2008/03/20 17:09:15


スポンサード リンク

文学・評論【本】に投稿されたその他の記事

お薦めの本 「月の影 影の海(上下)」 小野不由美(著)の評価

  • 評価合計(評価回数): 0点(1回)
  • トラックバック数   : 0回
  • この記事への評価分布
    ルポユーザーからの評価ルポユーザーからの評価ルポ外からの評価ルポ外からの評価
    • Excellent!
    • Good
    • So So
    • Not Good

この記事をスクラップする

お薦めの本 「月の影 影の海(上下)」 小野不由美(著)へのトラックバック一覧

ブログルポユーザーがトラックバックすると、この記事の評価に2点が加算されます。
ブログルポユーザー以外の方もトラックバックできます。
トラックバックする場合はコチラ↓

  • RSS 1.0


スポンサード リンク